🍉しいたげられたしいたけ

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第9惑星のド外れた遠さが話題になっているけど(いないか?)、じゃあ地球から一番近い惑星はどれかというと…

3日ほど前のニュースで、こんなのがあった。

megalodon.jp

ログインが必要な部分を読むと、他の小惑星の軌道の動きから計算し推定したとのことだ。これは天王星、海王星といった肉眼では見えない惑星を発見した手法と同じなので、大いに期待が持てる。やみくもに夜空に望遠鏡を向けたからといって、新天体が発見できるわけではないのだ。仮に何か新しいものを見つけたとしても、それが新天体であることが証明できなくては意味がない。

もちろん予想が外れる可能性はある。しかし外れたら外れたで面白いのだ。19世紀には、水星の公転軌道がニュートン力学に基づく理論値から大きくズレていることに基づき、水星の内側に未発見の惑星が存在することが予想されたことがある。「バルカン」という名前まで与えられた。しかし20世紀に入って相対性理論が登場すると、水星軌道のズレは一般相対性理論によって説明できることがわかり、「バルカン」は幻の惑星になった。

しかし新惑星より相対性理論の方が、科学に与えたインパクトは遥かに遥かにデカいのである!

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前置きばっかりが長いな。もうちょっと前置きが続きます。一昨日だったか、いつもの通り在宅仕事しながら「報道ステーション」を流しっぱして、聞くともなしに聞いていた。そしたら、第9惑星の予測される太陽からの平均距離約900億kmというのは、地球から太陽までの平均距離を神宮外苑の陸上競技場の第1レーンに譬えると、小平、国分寺、府中あたりに達する、みたいなことを言っていて「へぇー!」と思った。地球から太陽までの平均距離は約1.5億kmで、これを「1天文単位(au)」と言う。第9惑星までの距離は、天文単位を使うと約600auってことになる。1auを50mに縮小すると600auは30kmになる。あとで冷静に考えたら、神宮から直線距離約30kmってことで地図にモノサシをあてると上記の地名に突き当たるってことだけだけど、具体的な地名を出されるとインパクト強いよね。

それで思い出した。第9惑星がもし見つかったら地球からの平均距離が最も遠い惑星であることは間違いないとして、じゃあ地球からの平均距離が最も近い惑星は、どれだと思いますか? 「地球」って答えはナシだよ。

 実はこのクイズは、10年前に pya! にも投稿したことがあります。

www.watto.nagoya

「海王星に最も近い惑星は?」になっているのは、この頃に、冥王星が準惑星に降格…じゃないな、再定義されたというニュースがあったからじゃなかったかな。地球に限らず、どの惑星から見ても、平均距離の一番近い惑星は同じなんです。

すなわち、軌道が太陽に一番近い惑星、水星なんです。

なんでそうなのかを、数式を用いて示すのは容易なんですけど、数式を使わないで誰にでもわかるように示すのは難事です。上記 pya! への投稿も、一部の人へのウケはよかったと思っていますが、多数の人の評判はさんざんでした。昔から全然成長してないな俺…(^_^;

f:id:watto:20160124121621g:plain

で、前回のエントリー で使った「三相交流」を説明するアニメgifをちょっといじると、「地球からの平均距離が一番近い惑星が水星である」ことを示すアニメgifに改造できそうだと気づき、とりあえず水星、金星、火星の三惑星だけ作ってみました。

ベクトル図の頂点座標は(cos θ、sin θ)という、これ以上ない簡単な式で表せます。変数 θ の単位はラジアンです。

そして各惑星の太陽からの平均距離をL、公転周期をRとすると、日数をに相当する変数xを用いて各惑星の座標は(Lcos(πx/180R)、Lsin(πx/180R))と、ちょっとだけ複雑になります(フォントの関係でそれっぽくみえないけど「π(パイ)」は円周率です)がそれっぽく見えない)。惑星の軌道は楕円ですが、円で近似するものとします。

ウィキペをぐぐると、水星、金星、地球、火星の各値は、下記のようになります。アニメgifが作れるよう無限ループにするため、公転周期をキリのいい整数比で近似します。

  太陽からの平均距離 公転周期(日) 公転周期の近似値
水星 0.39(au) 87.97 90
金星 0.72(au) 224.70 240
地球 1.00(au) 365.26 360
火星 1.52(au) 686.98 720

 地球から各惑星への距離は、地球の座標を(Xe、Ye)、他の惑星の座標を(Xp、Yp)とすれば、三平方の定理により…

 距離= √(Xp-Xe)^2+(Yp-Ye)^2

で計算できちゃいます。上掲のアニメgif右側は、上式で計算した各惑星の地球からの距離を、時間を横軸にとって実線で表したものです。ベクトル図のときと違って、左側の各惑星の軌道上における現在位置との対応がわかりにくいですが、黒丸で表した地球から、各惑星に引いた線の長さをY軸にとってグラフにしたものと考えてください。

点線は、地球から各惑星への距離の、一周期分の平均値を計算したものです。あくまで上記のザツな近似による計算結果ですが、水星まで1.03(au)、金星まで1.11(au)、火星まで1.64(au)となりました。正確な値は検索するなり天文台に問い合わせるなりしてください。

軌道上の丸、グラフ実線、点線とも、水星は青、金星はオレンジ、火星は灰色で示しています。

アニメgifのフレーム数を節約する目的で公転周期を簡単な整数比になるよう近似したため、360日目と720日目に惑星直列になるのが不自然ですが、ご容赦ねがいます(地球の1年が金星の3/2年、火星の1/2年)。なお惑星直列になるタイミングで、地球から火星と金星への距離が最大または最小のどちらかになります。

さらに、地球からどの惑星への平均距離も、地球から太陽までの平均距離である1auより小さくなることはありません。当たり前のことのようにも思えますが、一方で「これも理にかなったことだな」とちょっと感嘆しました。

こんなことを計算して何の役に立つかということですが、あと一、二世紀もすると人類が滅んでいなければ、惑星間航行の時代を迎えるかもしれません。そのときには、必ずや水星が惑星間航行の中継基地、ハブ宙港になるでしょう。水星の平均表面温度は大気の温室効果がないため金星より低く、驚くべきことに氷の存在も確認されていると言います。

今のうちに水星の土地を買い占めておくと、子孫が大富豪になること間違いなしです(棒

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