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謎解き日本のヒーロー・中国のヒーロー(その6)

短めです。

01865/01866 CXX02375 わっと 日本のヒーローの条件8・最後には負ける
( 3) 98/03/06 23:39

 八犬士は最後に負けませんでしたが、「勧善懲悪」という儒教イデオロ
ギーへの拘泥は、大河ドラマの終盤からリアリティーを奪い去り、同時に
物語としての魅力も奪い去る結果になったのを「敗北」と表現することは
できないでしょうか?

98/03/06(金) わっと(CXX02375)

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『八犬伝』というと、我々の世代では、まずNHKの人形劇です。黒子姿で名調子の語りを勤めた坂本九は、惜しくも若くして1985年の日航機事故で遭難しました。次いで鎌田敏夫の原作を映画化した角川映画『里見八犬伝』です。主演女優の薬師丸ひろ子の好演が記憶に残りますが、確認のため検索するとキャストが当時のすげー豪華版で驚かされました。人形劇のほうは犬塚信乃が主役格でしたが、角川映画では真田広之演じる犬江親兵衛が主役となっており「こういうのもアリなんだ!」と感嘆しました。 

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滝沢馬琴の原作を読みたいと思いつつ「難解」「退屈」という評判も耳に入っており、恥ずかしながらまだ果たしていません。原作に関する知識は、主に山田風太郎『八犬伝〈上〉 (朝日文庫)』『八犬伝〈下〉 (朝日文庫)』および高田衛『八犬伝の世界―伝奇ロマンの復権 (中公新書 595)』から得たものです。なお山田風太郎には忍法帖シリーズの『忍法八犬伝』という小説もありますが別物です。

馬琴の原作は、ラストに近づくにつれ勧善懲悪的予定調和へのこだわりが濃厚になっていくと言われます。クライマックスであるはずの関東大戦では、関東管領・扇谷(上杉)定正を盟主とする諸大名の連合軍を、圧倒的少数の里見軍がやすやすと打ち破ります。捕虜となった管領連合軍の将兵を緊縛したまま小舟に乗せ「行いがよければ生き延びよ、さもなくば…」と川に次々流したというエピソードが述べられたりします。

勧善懲悪への拘泥あるいは作風の変調は、馬琴の晩年を次々と襲った不幸~妻と嫡男を亡くしたこと、自身が失明したことなど~に影響されたとも言われます。

しかし、原作の「完成度の低さ」(←あえて)が、かえって後世の表現者たちのイマジネーションを刺激し、八犬士の設定を「パブリックドメイン」とした新たな創作がこれまでに次々と現れ、おそらくは今後も次々と登場するであろうことを考えると、「敗北」と表現してしまったことは誤りであるかも知れません。いや、誤りであった方がいいです。

(つづく)

八犬伝〈上〉 (朝日文庫)

八犬伝〈上〉 (朝日文庫)

 
八犬伝〈下〉 (朝日文庫)

八犬伝〈下〉 (朝日文庫)